ヨウ素のDDS(Drug Delivery System 薬物送達システム)と作用機序

ヨウ素化合物の相互変化

ヨウ素化合物には二原子(分子型)ヨウ素(I₂)、ヨウ素イオン(I⁻)などがあります。
・ヨウ素は溶液のpHによって形態が変化し、その殺菌効果にも違いが出ます。酸性や中性の水溶液では二原子(分子型)ヨウ素(I₂)が優勢となり殺菌効果が最も高くなりますが、pHが高く(アルカリ性)なるにつれて次亜ヨウ素酸イオン(IO⁻)になり殺菌力がやや強くなり、さらにアルカリ性が強くなるとヨウ素酸イオン(IO₃⁻)やヨウ素イオン(I⁻)など殺菌力のない形態に変化します。
以上、ヨウ素はpHの変化だけでも分子形態(効果)が容易に変化します。
・酸化環境ではヨウ素イオン(I⁻)は二原子(分子型)ヨウ素(I₂)に変化します。逆に二原子(分子型)ヨウ素(I₂)はVC(アスコルビン酸)などの還元剤の存在で容易にヨウ素イオン(I⁻)に変化します。
この様にヨウ素化合物は周囲の環境により容易に相互変換します。

ヨウ素の作用機序

ヨウ素の作用機序の概略は二原子(分子型)ヨウ素(I₂)による酸化・ヨウ素化により細胞がダメージを受けるというものです。また、生体内物質のヨウ素化は二原子(分子型)ヨウ素(I₂)だけではなくヨウ素イオン(I⁻)と酸化剤の共存でも同様に反応が起こります。

ヨウ素の細胞膜透過について

細胞膜は物理的には電荷のない物質のほうが電荷のある物質より透過しやすいということが知られています。つまり電荷が無い二原子(分子型)ヨウ素(I₂)は電荷があるヨウ素イオン(I⁻)より透過しやすいことが推測されます。しかしながらヨウ素イオン(I⁻)は負電荷を持つており正電荷の化合物と結合すれば電荷が中和され無電化となり細胞膜を透過しやすくなります。
他の視点から細胞膜にはイオンチャンネル等の電荷を持つ化合物も細胞膜を通過させる構造もあるので考慮が必要です。
より具体的な作用機序には、

  • 細胞膜上のタンパク質をヨウ素化することで細胞膜の流動性を阻害し細胞を死滅させる
  • 細胞膜上や細胞内の細胞信号伝達系に関与する生体内物質をヨウ素化し結果的に細胞をアポトーシスに導く
  • DNAを直接ヨウ素化やDNA転写からタンパク合成までの経路の生体内物質の一部をヨウ素化することで最終的に細胞をアポトーシスに導く
  • ミトコンドリアに干渉して細胞をアポトーシスに導く
  • 免疫系に働きかけて免疫力を増強する
  • T3,T4が不足している場合は、T3,T4増産による代謝改善と免疫増強

以上のような作用機序が報告されています。どの作用機序が妥当かというとヨウ素の広い反応性を考慮し作用機序は単一ではなく環境により複数の機序が組み合わされて起こっている可能性が示唆されます。また、知見、臨床結果データからの容量反応曲線が不明瞭な形になる点からも、複数の容量反応曲線が加算された結果と推測されます。

DDS(ドラッグデリバリーシステム)の観点から

二原子(分子型)ヨウ素(I₂)の危惧するポイントはこの分子が細胞膜をよく透過するという点です。この透過性には細胞選択性がなくガン細胞以外に正常な細胞も攻撃してしまいます。つまり不適切な表現かもしれませんが「皆殺し効果」です。
DDSの患部に効率よく有効成分を安全に届けるという観点からヨウ素化合物を考察します。

二原子(分子型)ヨウ素(I₂)

効果のある化合物ですが反応性が高くターゲット細胞以外の細胞にも例外なく強いダメージを与えるため、患部に直接投与することが推奨されます。この刺激性より経口や点滴には禁忌といわれています。
この化合物の延長上にポピドンヨウド(商品名 イソジン)があります。
ポピドンヨウドは、ポリビニルピロリドン(PVP)と二原子(分子型)ヨウ素(I₂)を結合させた「ヨウ素錯体」で刺激が緩和されています。しかしながら、経口投与や点滴などについては禁忌とされています。
換言すると細菌細胞を破壊(殺菌)作用のあるものを経口や点滴すれば体中の正常細胞が殺菌されてしまうと言うことです。
まとめますと二原子(分子型)ヨウ素(I₂)は、それ自体非常に効果のあるものですが、疾患に関係のない細胞まで破壊してしまうので使用範囲が限定されます。
※ポピドンヨウドの使用方法や注意点は現実のポピドンヨウドの製剤であるイソジン製剤の使用説明書をご参照ください。

ヨウ素イオン(I)

刺激性はなく経口投与や点滴が可能になっています。ヨウ素イオン(I⁻)は点滴後の半減期が4時間位で体外に排泄されます。健康体であればヨウ素イオン(I⁻)は甲状腺以外の組織には、ほとんど吸収されません。例外としてガン組織のように解糖系が亢進して乳酸過剰で酸性化しており、多くのガン細胞でカタラーゼ合成が欠損しているため過酸化水素蓄積で酸化環境が形成されているので、ヨウ素イオン(I⁻)は局所的に二原子(分子型)型)ヨウ素(I₂)生成やヨウ素化が引き起こされガン細胞にダメージを与えます。この局所視点から見るとヨウ素イオン(I⁻)はガン患部までは無害で患部のみで効果が出るというDDSの目的に叶った効果があります。
まとめますとヨウ素イオン(I⁻)はガン患部の酸性や酸化化環境をアップさせる併用薬を考慮すると、より効果が期待されます。
※ガン組織での過酸化水素の更新状態は高濃度VCの点滴でも可能です。このため併用薬として高濃度VCをおすすめします。

(次亜)ヨウ素酸

ヨウ素酸は経口では胃酸の影響で二原子(分子型)ヨウ素(I₂)に変化する可能性があり、点滴はその刺激性から使用は不可能です。

別の視点から

ヨウ素イオン(I⁻)の使用が最も妥当と考えられます。
過去おいて二原子(分子型)ヨウ素(I₂)型ヨウ素製剤の効果は広く認知されていましたが、経口や点滴での刺激性が強く、この刺激減弱化のための研究が進みイオンタイプヨウ素製剤が作られて使用されてきました。これが現在のヨウ素製剤の主流となっています。